報告
乳癌術後における皮膚表面温度と肩関節可動域の6か月までの経時的変化
川崎 桂子
1
,
高橋 友明
1
,
畑 幸彦
1
,
青木 幹昌
1
,
唐澤 達典
1
Kawasaki Keiko
1
1信州大学医学部附属病院リハビリテーション部
キーワード:
乳癌
,
肩関節
,
サーモグラフィー
Keyword:
乳癌
,
肩関節
,
サーモグラフィー
pp.553-557
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100117
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乳癌術後の合併症としては,肩関節の運動障害,疼痛,上肢浮腫が挙げられ,肩関節の運動障害の原因としては手術侵襲による皮膚の瘢痕,創部痛,上腕・腋窩の牽引痛によるとされている1).最近は手術の低侵襲化に伴いこれらの合併症は少なくなってきてはいるが,現在でも乳癌術後の肩関節の運動障害はなくなってはいない1).この乳癌術後に発症する肩関節可動域制限の要因に関する定量的研究は見つからなかった.筆者らは,以前,術後早期には創部周囲の炎症による上肢挙上時の牽引痛が肩関節の可動域制限を引き起こしているのではないかという仮説を立てて,サーモグラフィー2)を用いて皮膚表面温度の測定と肩関節屈曲角度の計測を経時的に行い,術後3か月の時点でも皮膚表面温度は術前より有意に高く,肩関節屈曲角度は術前まで戻っていなかったことを報告した3).今回,さらに術後6か月まで追跡調査することができたので報告する.
対象
当院において,乳癌に対し非定型的乳房切除術を施行された患者のうち,研究ヘの参加の同意が得られた15例15肩を対象とした.性別はすべて女性で,検査時年齢は平均54.8歳(29歳~84歳)であった.術側は,右側7肩・左側8肩で,術式はAuchincloss法4)10名・Kodama法5)5名であった.切除範囲は頭側が鎖骨,尾側が腹直筋鞘,内側が胸骨縁,外側が広背筋前縁であり,全症例腋窩郭清を施行されており,Kodama法では鎖骨下リンパ節郭清も施行されていた.また,術前に肩関節の可動域制限や痛みを認めた症例は除外した.
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