- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
これまでにも脳卒中患者の歩行能力に影響を与える要因の研究が数多く行われ,年齢1,2)や運動麻痺の程度2,3),非麻痺側筋力4~6),バランス機能5,7~10)など様々な要因の関与が報告されている.近年歩行能力とバランス機能の関連についての検討としてFunctional Balance Scale(以下FBS)を用いた報告が様々な症例を対象として行われ,Usudaら11)は脳卒中患者の歩行能力が良好な者ほどFBS得点が高いと述べている.しかしながらこの報告ではFBS合計得点を指標としているため,構成されている14の下位項目が歩行能力に対してどのように関わっているのかについては明らかではない.下位項目に着目した報告として丹羽ら12)の研究があるが,発症後12週までの測定であり,また年齢や運動麻痺などの他の歩行規定要因を含めずにFBS下位項目だけを検討したものである.慢性期脳卒中患者においては運動麻痺自体の改善が困難な場合が多いため,この時期においても改善が見込まれる要素を明らかにすることは,歩行能力の改善において重要であると考えられる.そこで今回われわれは,慢性期脳卒中患者を対象に歩行能力とFBS下位項目との関連について分析し,さらにFBS以外の要因も加味したうえで,歩行能力の規定因子について検討した.
対象および方法
対象は,埼玉県および茨城県内の介護老人保健施設に入所,または通所している,発症から1年以上経過した慢性期脳卒中患者のうち,一側のみに運動麻痺が認められた126名で,性別は男性73名,女性53名,平均年齢は72.2±10.7歳,麻痺側の内訳は右片麻痺62名,左片麻痺60名であった.運動麻痺の判断は,Brunnstrom Recovery Stage(以下Br-stage)のテストにて,ステージⅥがクリアできなかった場合に麻痺ありとした.下肢Br-stageは,Ⅰ:1名,Ⅱ:17名,Ⅲ:41名,Ⅳ:22名,Ⅴ:19名,Ⅵ:26名であった.このうち下肢Br-stageⅡの3名,Ⅲの10名,Ⅳの2名が歩行時に短下肢装具を使用していた.なおFBS検査の施行に困難を来すような著しい高次脳機能障害や骨関節疾患を有する者は除外し,対象者全員には本研究の主旨を十分説明し,同意を得て実施した.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.