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近年,新生児医療の進歩はめざましく,平成15年度の新生児死亡率は1.7(対1,000)となっている1).また,救命される新生児の増加に伴い,出生体重が2,500g未満の低出生体重児は増加しており,この背景には出産年齢の高齢化,不妊治療の進展に伴う多胎の増加も大きな要因となっている2).中村ら3)によれば,出生体重1,000g未満の超低出生体重児の6歳時調査ではその約2割になんらかの異常を認めており,新生児集中治療室(neonatal intensive care unit,以下NICU)より理学療法士が介入する場面も増えてきている.神経系の発達が未熟な低出生体重児は,胎外環境におけるストレス対応能力が低いといわれており,理学療法を実施するうえでも不適切な刺激や過剰な刺激が入力されれば,理学療法自体が有害なものになりかねない.現在,新生児医療・ケアの領域で「minimal handling」が常識的な認識となっている.これは,脆弱な新生児,特に低出生体重児などのハイリスク児にとって重要であり,「必要なときに,必要な手段で,必要最低限の介入を図ること」が介入を行ううえでの必須事項となる.理学療法士も共通の認識で理学療法の実施を行うべきである.ここでは,生物学的・社会的にハイリスクに位置付けられる早産児・低出生体重児を対象とした理学療法について,NICUで行う評価や治療を実施するうえでのリスク管理について述べていく.
新生児の解剖・生理4~7)
新生児の理学療法を行ううえで,成人との大きな違いは神経系・呼吸循環系・筋骨格系・消化器系などの未熟性である.健康な新生児は,在胎週数が38~40週までに生命維持に必要なすべての組織系の働きを完了させているが,早産児では子宮外生活で適応する最低限の準備がなされないまま出生に至っているため,わずかな刺激に対しても呼吸・循環系の変動が引き起こされやすい.そのため,理学療法実施時にはモニターのみならず視覚的にも呼吸・皮膚色の変化等に常に意識を配ることや,実施環境の温度設定,理学療法実施前の手洗いの徹底が必要となる.これらを理解するためには,その解剖学的・生理学的未熟性に留意しなければならない.まず,新生児の解剖学的・生理学的特徴についてふれる.
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