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脳性麻痺の科学的トレーニングは本当に可能なのか? それとも全く不可能なのか? 脳性麻痺のトレーニングに携わってきたものは誰しも興味を持つことと思われる.筆者は15年間,肢体不自由児施設に勤務し,理学療法の中にスポーツを積極的に取り入れ,全国肢体不自由児療育研究大会に「脳性麻痺のスポーツ療法」1~8)として紹介してきた.演題発表をすると必ず質問があった.それは「トレーニング効果についてはどうなのか?」「運動強度はどの程度か?」「スポーツをすると連合反応が生じ,身体に悪影響はないのか?」など様々であった.従来,脳性麻痺者のスポーツは,過激な運動によって異常筋緊張や伸張反射を誘発し,拘縮・変形を助長するのでよくないといわれてきた.また,将来のパラリンピック選手育成を目指してトレーニング指導もしてきたが,経験の域から脱しきれていない状況であった.なんとか脳性麻痺者に対しての科学的トレーニングはできないものだろうか.
障害者スポーツに関する研究において,田島ら9)は運動生理学の立場から障害者スポーツの運動生理学的意義について次のように述べている.「障害者スポーツは,ごく短期間で市民スポーツ的なものと競技性を重視したものへと発展進歩している.しかし,障害者スポーツの現場では,数少ない資料と経験論から競技力の向上が試みられているのが現状である.障害を持つ者の安全を確保し,市民スポーツとして障害者の健康の維持・増進に役立ち,競技力の向上に寄与するために運動生理を理解することは必要不可欠である.また,障害者は日常生活動作だけで運動能力を維持することはなかなか困難であり,障害者の運動能力維持のためには,日常的に積極的な運動が必要である.障害者における運動の重要性は健常者以上であることは論をまたない.一方,障害者は生理機能の障害も併せもち,身体に負担をかける運動を行うことは危険だという考えがあった.確かに,多くの障害者はなんらかの形で生理機能にも障害を持っていることが多い.」
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