コラム
染色体切断症候群
大島 利夫
1
1東海大学医学部附属病院臨床検査科
pp.990
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906335
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染色体切断症候群とは,染色体の断裂(break)やギャップ(gap),娘染色体交換(exchange)などの異常が高頻度に生じる先天性疾患である.ファンコニ(Fanconi)貧血や,ブルーム(Bloom)症候群,毛細血管拡張性運動失調症(ataxia-telangiectasia;AT)などが知られている.染色体断裂やギャップの形成は,葉酸拮抗薬メソトレキセートや,マイトマイシンC,ブレオマイシンなどのDNA二重鎖間架橋形成薬の添加により著しく増加する.
ファンコニ貧血は,先天性の骨髄造血機能低下による再生不良性貧血と多発性先天異常を合併する疾患で,常染色体劣性遺伝をする.染色体断裂の発生機序は,DNA損傷の修復系の異常と損傷発生の阻止機能の異常が考えられている.また,DNA損傷の発生機序は,酸素による傷害が考えられている.このことは正常細胞でも,酸素分圧の高い条件下で培養すると染色体の断裂やギャップなど異常が発生することや,ファンコニ貧血の細胞を低酸素状態で培養すると染色体の異常が抑制されることから推測される.遺伝的な発生頻度は,1〜40万人に1人で保因者は0.3〜2%と推定されている.臨床像として,皮膚の色素沈着,骨格の奇形,低身長,性腺機能不全などが挙げられる.診断の契機は小児期の再生不良性貧血や思春期以降の白血病の発症が多い.診断の確定には,DNA二重鎖間架橋形成薬の添加による染色体の脆弱性試験が行われる.
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