見開き講座 分子細胞遺伝学への道しるべ・18
染色体10.染色体異常の臨床(2)性染色体異常症候群
田村 高志
1
1杏林大学保健学部臨床遺伝学教室
pp.538-539
発行日 2002年6月1日
Published Date 2002/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906656
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性染色体と性分化
染色体には常染色体(autosome)のほかに性に関係するX染色体とY染色体の2本の性染色体(sex chromosome)がある.女性はXX,男性はXYの組み合わせの構成となっている.
性決定にはY染色体上の睾丸決定因子(testisdetermining factor;TDF)が関与している.このTDFとして1990年SRY(sex-determiningregion of Y chromosome)遺伝子がY染色体短腕末端の偽常染色体領域(pseudoautosomalregion;PAR)の近位側にマッピングされた(性決定・分化に関与するいくつかの遺伝子が常染色体からもクローニングされている).Y染色体を持つ個体はSRY遺伝子産物が未分化性腺を精巣へと誘導し,精巣のセルトリ(Sertoli)細胞からは抗ミューラー(Müller)管ホルモンが分泌されミューラー管が退縮する.一方,ライディッヒ(Leidig)細胞からはテストステロンが分泌されウォルフ(Wolff)管が発達して男性型へと分化する.Y染色体を持たない個体では,そのままミューラー管が発達して女性型へと分化する.
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