増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 5 凝固・線溶検査
5.特殊検査
5)AT III
湯浅 宗一
1
,
辻 肇
2
1京都府立医科大学附属病院臨床検査部
2京都府立医科大学附属病院輸血部
pp.879-881
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905498
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
検査の目的と意義
AT III(アンチトロンビンIII)は432個のアミノ酸残基からなる分子量59,000の一本鎖の糖蛋白質である.また,血漿セリンプロテアーゼインヒビターファミリーの蛋白の1つで,ヘパリンの存在下にトロンビンや活性化第X因子などのセリンプロテアーゼ凝固因子を阻害する1).AT IIIは主として肝臓で産生されるが,この血中の濃度はその産生と消費のバランスによって保たれている.例えば肝障害ではその産生が低下し,DICにおいては消費によって血中濃度は低下する.したがって,肝障害時,DIC,あるいはヘパリン投与時のAT III製剤補充の適応の決定などにAT III活性値を測定することが必要となる.また,妊娠,手術などを契機として血栓塞栓症を発症する疾患の2〜6%に先天的AT III欠損症が報告されているが2),これらの疾患については活性値と同時に抗原量の測定,さらに遺伝子検査も必要となってくる.AT III遺伝子は第1染色体q23〜25に存在し,全長約19kbからなり,7個のエクソンと6個のイントロンから構成されている.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.