増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 5 凝固・線溶検査
5.特殊検査
6)プロテインC,S
西岡 淳二
1
,
登 勉
2
,
鈴木 宏治
3
1三重大学医学部附属病院検査部
2三重大学医学部臨床検査医学講座
3三重大学医学部分子病態学講座
pp.882-886
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905499
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
血管内壁にはプロテインC(PC)凝固制御系と呼ばれるXa因子やトロンビンの生成を阻害する血液凝固制御機構が存在する.血管内で生成された微量のトロンビンは,血管内皮細胞上のトロンボモジュリン(TM)に結合し,セリンプロテアーゼ前駆体であるPCを特異的に活性化する.血管内皮細胞上にはPCレセプター(endothelial cellprotein C receptor:EPCR)が存在し,EPCR結合PCはトロンビン・TM複合体により効率的に活性化される1).活性化されたPC(APC)は,プロテインS(PS)をコファクターとして,凝固反応の律速因子であるVa因子とVIIIa因子を分解・失活化し,凝固反応の過剰な進展を阻害する.一方,APCは内皮細胞や活性化血小板リン脂質膜上でPCインヒビター(PCI)により失活化される2).
血漿中のPSは,補体系制御因子のC4b結合蛋白質(C4BP)と乖離・会合の平衡状態にあり,PSの約60%はC4BPとの複合体型として,40%は遊離型として存在し,遊離型PSのみがAPCのコファクターとして機能する.また,PSはVa因子およびXa因子に直接結合してプロトロンビナーゼ複合体の形成を阻害し,APC非依存性に血液凝固反応を阻害する.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.