検査ファイル
〈項目〉アンチトロンビンIII
辻 肇
1
1京都府立医科大学附属病院輸血部
pp.992-993
発行日 1990年6月1日
Published Date 1990/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900297
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はじめに
アンチトロンビンIII(antithrombin III;AT III)は血液凝固を調節するうえで重要な役割を果たすインヒビターであり1),その性状は表1のようにまとめられる.AT IIIによるトロンビンの阻害反応はかなりの時間を要して進行するが(進行性アンチトロンビン活性;progressive antithrombin activity),ヘパリンが共存すれば著しく速められる(即時性アンチトロンビン活性;immediate antithrombin activity).ヘパリンが抗凝固活性を発現する主たる作用機序は,この反応様式の変換であると考えられている2).AT IIIには,トロンビン以外にも活性化第X因子をはじめとする多くの凝固線溶系因子に対する抑制作用が認められる.
臨床的には,血漿AT IIIレベルの低下により凝固亢進状態がもたらされ血栓形成傾向が出現することが知られ,先天性AT III欠乏症における血栓症の多発がその典型例である3).
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