検査データを考える
補体寒冷活性化現象
上田 一仁
1
,
清水 章
2
1大阪医科大学附属病院中央検査部
2大阪医科大学病態検査学教室
pp.1089-1092
発行日 1998年11月1日
Published Date 1998/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903654
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はじめに
日常検査で血清補体価を測定していると,しばしば低補体価の症例に出会う.同時に測定したC3,C4蛋白量も低下傾向にあれば,生体内で補体系を活性化するような免疫複合体を持った自己免疫疾患,あるいは肝機能障害による補体系蛋白の産生不全などが疑われる.一方,血清補体価が測定感度以下,あるいは極めて低値であるのに対し,C3,C4蛋白量が基準範囲内である症例も存在する.C3,C4以外の補体系蛋白の欠損症を除くと,このような症例はほとんどが補体寒冷活性化現象(cold-dependent activation of serum complement;CDAC)を示す症例である.CDACとは,全血あるいは血清を低温に放置することで試験管内で補体系が活性化され,血清補体価が低下する現象である.
近年,この現象を示す症例の大部分がC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)に感染していることが明らかになった.一方,HCV感染患者でクリオグロブリン血症が高頻度に認められることが報告され,ともに低温で生じる現象であることから検索してみると,両者は強く関連していることが明らかになった.また,HCV感染でリウマトイド因子(rheumatoid factor;RF)が高頻度に検出されることが報告されており,これらの現象はHCV感染に伴う自己免疫現象の一部であると考えられる.
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