増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
輸血感染症
HBV
坂本 穣
1
,
武田 清
1
,
赤羽 賢浩
1
1山梨医科大学第1内科
pp.280-284
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903160
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
輸血後肝炎ウイルス感染は,第二次世界大戦以降のわが国では流行を極め,血清肝炎の多発を招くこととなった.そのころの輸血後肝炎患者の中に,最近になって肝硬変,肝癌に進展している患者も多い.その後,肝炎ウイルス学の進歩とともに,輸血のスクリーニングにさまざまな手法が取り入られ,1964年,売血から献血への移行,1972年,HBs抗原プレチェック,1989年,HBc抗体検査の追加とHCV抗体検査が行われるに至り,今日の日赤血液センターでスクリーニングされた血液は,肝炎ウイルスの感染性において世界で最も安全となった.しかしながら,B型肝炎ウイルス(HBV)はいまだ輸血後肝炎の原因のひとつであり,スクリーニングを行っているにもかかわらず感染し,しかもその中に劇症肝炎になるものも少なくないことが問題となっている.最近では,遺伝子工学的手法を応用することにより,従来,血清学的見地によりのみ議論されてきたいくつかの問題点は,ウイルス遺伝子の多様性と宿主の免疫応答で説明できることが明らかになってきた.しかし,HBV感染の診断には抗原抗体系による血清学的手法が最も重要であることは現在でも変わりがなく,本稿ではHBVと血清学的診断について述べる.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.