Laboratory Practice 〈免疫・血清〉
オカルトHBV感染
飯沼 一茂
1
1アボットジャパン株式会社 マーケティング本部学術情報部
pp.537-540
発行日 2009年6月1日
Published Date 2009/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102466
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はじめに
ウイルス肝炎はウイルスに対する宿主の免疫応答の結果であり,ウイルスと宿主の一方を研究してもウイルス肝炎全体の把握は困難である.ウイルスに対する宿主の免疫応答の際に,制御性T細胞がウイルスと宿主との長期間の共存に大きな役割を演じていることが次第に明らかにされている.ウイルス肝炎が発症し終焉するとウイルスは血中から排除されるが,組織(肝臓,末梢血単核球,骨髄など)には長期間残存することが次第に明らかとなってきた.
血中HBs抗原が陰性であるにもかかわらずB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus,HBV)-DNAが血中または組織中に検出される状態がオカルトHBV感染である.したがって,オカルトHBV感染者を特定するためにはHBc抗体およびHBs抗体を測定することが有効である.
オカルトHBV感染者は臨床上問題なく感染拡大のリスクも非常に低いと考えられてきた.しかしながら,オカルトHBV感染状態の患者に対して免疫抑制を伴う治療を行うとHBVの再燃が起こることがあり,場合によっては重篤な肝炎となり,最悪の場合は死亡することが明らかになってきたこと,さらには,オカルトHBV感染状態からでも肝細胞癌が見つかることなどからオカルトHBV感染が注目されている.
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