検査法の基礎検討のしかた 血液検査・5
凝固・線溶系の分子マーカー
香川 和彦
1
,
福武 勝幸
1
1東京医科大学臨床病理学教室
pp.545-550
発行日 1997年6月1日
Published Date 1997/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903078
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はじめに
血液が生体内を循環し,その機能を発揮させるためには,血管内で流動性を保持し,血管外への流出を防御する止血機構が不可欠である.止血機構には血管,血小板,凝固系,線溶系が関与し,これらの相互作用により生理的な調和を生み出しているが,この均衡に破綻をきたすと,異常な出血や血栓という病態を呈する.
凝固系は反応開始の機序から,内因性と外因性の経路に区別されるが,凝固反応の基本は,前駆酵素の活性化が起きて活性型の酵素が生じると,これが次の前駆酵素を活性化して増幅するという,末広がりの将棋倒しのような連鎖反応(カスケード反応)であり,最終的にフィブリノゲンをゲル状のフィブリンに変化させて止血に関与する.また凝固抑制因子により,過剰な凝固反応を抑制するフィードバック機構も作用し,自己調節機能を有する複雑な酵素反応系である.このように凝固系の生理的な作用は,出血部位にフィブリンを形成し,血小板とともに血栓を形成して出血を防御することである.病的には,凝固系の機能亢進により血栓症を,機能障害により出血傾向を招く.
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