今月の主題 血小板・凝固・線溶系の分子マーカー
巻頭言
血小板・凝固・線溶系の分子マーカー
池田 康夫
1
Yasuo IKEDA
1
1慶應義塾大学医学部輸血センター
pp.1575
発行日 1989年11月15日
Published Date 1989/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914176
- 有料閲覧
- 文献概要
止血血栓が形成される機構ほど,人間の身体の仕組みの精巧さを感じさせるものはない.血管内を流れている血液はつねに流動性を保ち,決して凝固することはないが,いったん血管が破綻し,出血が起こるような状況が生じると,血小板はその部位で凝集塊を形成し,同時に生成されるフィブリンとともに強固な止血血栓を完成させるのである.しかし,この止血血栓形成の過程は決して果てしなく続くわけではない.出血をとめ,しかも血管内腔を閉塞しないような適当な大きさの血栓を作って終末を迎えるのである.
近年,この血栓形成を制御する機構が次ぎ次ぎに明らかにされ,血液凝固,線溶の研究も新しい時代に入った.血液凝固の活性化により生成されたトロンビン,さらにはVIIa,Xa,IXaはアンチトロンビンIII (ATIII)により中和され,血液凝固を制御する.一方,トロンビンは血管内皮細胞膜糖蛋白であるトロンボモジュリンと結合すると,その凝固活性,血小板凝集惹起活性を失うが,同時にプロテインCを活性化する.活性化プロテインCは,vIIIa,Va因子を不活化することにより血液凝固を制御している.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.