話題
輸血された血液中のリンパ球の反乱—輸血後GVHD
原 宏
1
1兵庫医科大学輸血学
pp.300
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901976
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輸血後の移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)は輸血された血液中のリンパ球が受血者の身体の一部を異物と認識し,攻撃する疾患であり,輸血が臓器移植の1つであることを示している.
最近では,輸血後GVHDは生物学的に個性を異にする輸血された血液中のリンパ球と患者リンパ球の生存を賭けた闘いの結果と理解されてきた.すなわち,輸血されたリンパ球は患者の組織を異物と認識して増殖を開始する.たいていの場合には数のうえで圧倒的に優勢な患者リンパ球が輸血リンパ球を排除している.しかし,まれには細胞性免疫能の低下あるいはHLAなどの組織適合抗原の組み合わせにより,輸血したリンパ球は患者リンパ球を異物と認識できるが,患者リンパ球は輸血したリンパ球を異物と認識できない関係ができると,輸血したリンパ球の一方的な増殖が起こり,輸血後GVHDが発生する.
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