輸血検査メモ
輸血後GVHDの診断
田所 憲治
1
1日本赤十字社中央血液センター
pp.335
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903173
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輸血後移植片対宿主病(post-transfusion graft versus host disease;PT-GVHD)は輸血された血液中のリンパ球が受血者によって拒絶,排除されずに生着し,逆に宿主を非自己として認識して増殖し,宿主組織を攻撃,障害することによって起こる病態である.
通常,輸血1〜2週間後に発熱(38°以上が持続),紅斑が出現する.紅斑は数日で全身に広がり,紅皮症型皮疹となる.次いでAST/ALTが上昇する肝障害(一部の症例では数日で正常化することがあるが,総ビリルビンは持続的に増加することが多い)が,また約30%の症例で下痢,下血が出現する.輸血後約20日で白血球減少(<1,000/μl)が,次いで血小板減少,赤血球減少も加わり汎血球減少症となる.このとき骨髄は極度の骨髄無形成となっている.大多数は輸血後30日以内に敗血症,出血,多臓器不全で死亡する.上記の症状がおおよそこの順に出現したときは,PT-GVHDが強く疑われる.確定診断には他人のリンパ球が患者の血液,組織に生着し,増加しているキメリズムを証明することが必要である.従来キメリズムの証明法としては,患者血液のHLA型の変換,女性患者組織での男性由来のY染色体の検出などが用いられてきた.赤十字血液センターでは個人識別に用いられているマイクロサテライトDNA(μsDNA)を用いた遺伝子確定診断法を開発し,診断に用いている.
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