話題
PCR
田村 尚亮
1
1順天堂大学呼吸器内科
pp.295
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901973
- 有料閲覧
- 文献概要
PCR(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)法は最近開発されたDNA増幅手技である.高温で失活しないTaqポリメラーゼを用いた本法の基本原理は,①加熱によるDNAの変性,②アニーリング,③二本鎖DNAの合成伸長の3つのステップで構成されている.DNAはグアニン(G),アデニン(A),チミン(T),シトシン(C)の4種類の塩基が一列に重合し,さらにAとT,CとGが結合した二本鎖の形で存在している.94℃で加熱されたDNAは一本鎖のDNAとなる.これを鋳型として,2種類のプライマーと呼ばれる標的DNAに相補的な構造を持つ20塩基程度の長さの合成DNAを結合させ,72℃前後で反応を継続すると,プライマーによって挟まれた領域のDNA(通常は200〜1,000塩基対程度)が合成される.こうした一連の反応を20〜40サイクル繰り返すと,標的DNAは数時間で約106倍程度まで増幅される.
PCR法では1個の細胞から分離したDNA/RNAの増幅も可能であるため,少量の臨床検体であっても分子生物学的検討の対象とすることができるようになった.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.