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三重鎖DNAとその応用
西川 直子
1
,
木山 亮一
1
1東京大学分子細胞生物学研究所
pp.760-762
発行日 1993年8月1日
Published Date 1993/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901662
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三重鎖DNAは二本鎖のDNAにもう1本のヌクレオチド鎖が水素結合したその名のとおりの構造をしている(図1)1).三重鎖DNAという言葉が一般的に聞き慣れないため新しい感じがするが,その歴史は意外に古い.初めて報告されたのは,ワトソンとクリックが二重らせん構造を発見したわずか4年後の1957年のことである.しかし,しばらくは構造についての研究が主になされており,最近になってこの三重鎖DNAは癌やエイズまたはその他の遺伝病の治療や検出に利用できる可能性が示されたため,特に注目されるようになった.
三重鎖DNAは,二重鎖DNAのようにゲノム全体にあてはまる構造ではなく,一部分のホモプリン・ホモピリミジン(またはそれに近い)配列と呼ばれる一方の鎖にプリン塩基(GまたはA),他方の鎖に相補的なピリミジン塩基(TまたはC)が並んだ特殊な配列で形成される.三重鎖はここに3本目の鎖,ホモプリンまたはホモピリミジンの配列が結合して形成される.またこの塩基の組み合わせもさまざまで,例えば図1-bに示したT・AT(3本目の鎖・もとの二重鎖DNA)やC+・GCのほかにG・GC,G・TA,A・ATなどが報告されている.
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