増刊号 臨床化学実践マニュアル
I.緊急検査への対応
9.血液凝固
櫻川 信男
1
1富山医科薬科大学医学部臨床検査医学
pp.39-44
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901480
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■凝血機構と止血マーカー
先天性あるいは後天性に凝血障害を示して臨床的に出血症状あるいは血栓形成を惹起する血栓止血機構が,分子生物学的に解明され,図1のごとく血管系,血小板系,凝固系,線溶系および阻害系の要因から構築されて,多くの分子マーカーが存在することがわかった.出血性素因はこれらの要因が単一あるいは複合して形成される.一方では加齢とともに動脈硬化による血管系障害や凝固亢進と線溶低下がみられ,また他方では凝固線溶系活性化物質を排除する網内系機能や免疫機能の低下によって癌腫や重症感染に罹患しやすくなり,そしてこれらの疾患に特有な凝固活性化「引き金物質」により凝固亢進がもたらされて血栓症が招来される.この際,血小板や凝固因子が消費され,線溶系亢進を惹起するとともに出血症状を示して,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC)となる.
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