増刊号 尿検査法
II.各論
20.生理活性物質
(4)サイトカイン
笠原 忠
1
,
高 余洲
2
1自治医科大学医動物学教室
2自治医科大学臨床病理学教室
pp.250-253
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901138
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1970年代より,造血因子であるエリスロポエチンやコロニー刺激因子(CSF)が尿中から精製され,尿中にサイトカインの存在することが証明された.サイトカインは感染や炎症時に種々の刺激が加わったとき,主として局所で産生され,作用するもので,通常血中にはきわめて微量しか存在しない.しかしながら,局所で大量につくられたり,もしくは人為的に体内に大量に導入した場合,遠隔臓器や全身性に作用することもある.
腎機能正常時,血漿蛋白の糸球体での透過性は蛋白の大きさ,形,濃度とその荷電によって決定される.主なサイトカインの分子量は8kD(IL-8)から80kD(M-CSF)くらいまでであり,血中にサイトカインが大量に存在すれば,尿中にも検出されうる.これまで,尿中サイトカインについての報告は少ない.その理由として,尿検体の処理方法,各サイトカイン局所での産生,生体内分布と分解,クリアランスの差異,血中あるいは尿中におけるサイトカインのレセプター(R)やインヒビターあるいは結合蛋白(BP)による影響など,まだ未解決の問題が多く,尿中でのサイトカイン量測定の臨床的意義が未知であることによる.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.