増刊号 尿検査法
II.各論
20.生理活性物質
(3)サイクリックAMP
横田 一成
1
1島根大学農学部生物資源科学科
pp.246-248
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901137
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はじめに
サイクリックAMP(アデノシン3',5'-モノリン酸:cAMP)は,各種のホルモンが標的細胞表面の受容体に結合した後,ATPよりアデニル酸シクラーゼの作用でつくられる細胞情報伝達物質,すなわち“セカンドメッセンジャー”として働くよく知られた化合物である(図1).多くの場合,cAMP依存性プロテインキナーゼを活性化することにより特定の酵素の活性を調節する.cAMPは,多くの生体反応にかかわることがよく指摘されているが,cAMP測定の臨床診断に有効なものは限られている.血液中のcAMP量の測定だけではその意義は少ない.
一方,尿中cAMPの源は大きく半分の2つに分けられる.ひとつは血液中のcAMPが腎糸球体で濾過されたもので,もう一方は,副甲状腺ホルモン(PTH)が腎臓に作用して腎臓から排泄されたものである(図2).この腎排泄(nephrogenous)cAMP量の測定は,PTHを分泌する副甲状腺機能のよい指標となり,PTHを測定するよりも信頼性が高くその臨床的意義は高い1〜3).例えば,高Ca2+血症を伴う原発性および続発性副甲状腺機能亢進症では尿中cAMPが上昇し,特発性や持続性の副甲状腺機能低下症では尿中のcAMPが低下しているが,PTH負荷試験でcAMPが上昇する.
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