増刊号 尿検査法
II.各論
19.ホルモンおよび関連物質
1)下垂体関連
(4)抗利尿ホルモン
椎名 達也
1
,
吉田 尚
1
1千葉大学医学部第2内科
pp.200-201
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901118
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はじめに
抗利尿ホルモン(ADH)は視床下部-下垂体後葉系において合成されるホルモンで,腎集合管に作用して水の再吸収の調節を行っている.下垂体後葉からのADHの分泌の減少(欠乏)した病態である中枢性尿崩症と心因性多尿との鑑別や,不適切にADHの分泌が亢進することにより生じるSIADH(syndrome of inappropriate secretion of ADH)を診断するうえでADHの測定は重要である.しかしながら,その血中濃度はきわめて低値であり,また血漿中にはADH様免疫活性物質が存在しており,これらの夾雑物を除去しないと,見かけ上の値が高値を呈する.
一方,尿中ADHの測定も以前は抽出操作により夾雑物を取り除いた後行っていたが,尿中ADH濃度は血中に比べて比較的高値であり,また最近開発されたADH測定キットは高感度なため低濃度まで正確に測定できることから5),尿を希釈することにより抽出操作を行うことなく,夾雑物の影響を受けずに測定が可能であるといわれている.
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