特集 ホルモンと生理活性物質
各論
3.下垂体後葉ホルモン系
1) ADH (抗利尿ホルモン)
吉田 勢津子
1
,
吉田 尚
1
Setsuko YOSHIDA
1
,
Sho YOSHIDA
1
1千葉大学医学部第2内科
pp.95-98
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902185
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生合成・分泌・機能
1.生合成
ADH (antidiuretic hormone;抗利尿ホルモン)は視床下部の室傍核(paraventricular nuclei)や視索上核(supraoptic nuclei)の大細胞ニューロンにおいて,ADHとニューロフィジンⅡと呼ばれる特異的結合蛋白質からなるプロホルモン(プロプレッソフィジン)として合成される.神経分泌顆粒として軸索内を正中隆起から下垂体後葉の神経終末に2~3mm/時の速度で移動する過程でプロセッシングを受け,ADHとニューロフィジンⅡに切断され貯蔵される(図1).このニューロフィジンⅡは軸索末端でのホルモン蓄積に関与すると考えられている.
さらにこのような経路とは別に,室傍核小細胞ニューロンから脳幹・脊髄・大脳辺縁系および正中隆起外層門脈起始部へ分布する系も存在する.この小細胞ニューロンは脳内に広く分布し,ADHのほかに副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)やソマトスタチンなどを含むものもあり,中枢の自律的制御にも関与していると考えられている.また,正中隆起外層門脈起始部から分泌されたADHは,下垂体門脈血管系を経てACTH分泌刺激に関与している可能性が示唆されている.
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