特集 外科と内分泌・2
抗利尿ホルモン
稲生 綱政
1
Tsunamasa INOU
1
1東京大学医学部木本外科
pp.181-185
発行日 1965年2月20日
Published Date 1965/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203535
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下垂体後葉エキスの3大作用として血圧上昇(血管収縮作用による),子宮収縮および抗利尿作用のあることはSelye以来認められているところである.生体はいかなるStressにたいしても下垂体副腎皮質系の反応が起ることもSelyeの有名な研究成果の1つである.この場合の下垂体は主として前葉機能の亢進を意味するものである.しかしその後の渋沢ら(1951)は侵襲後に見られる乏尿が下垂および後葉からくる抗利尿ホルモン,(ADH)であることを確め,StressによつてADHの分泌も亢進され,その機序としてアセチルコリン系を明らかにした.
さて外科臨床におけるADHの役割は主として水分電解質代謝にたいする影響を考えるべきであろう.すなわち抗利尿ホルモンを投与するということではなく,外科侵襲にさいして分泌される,ADHが生体の術後過程にどのような影響をおよぼすかということが問題となる.この点について外科の臨床的な立場から2・3述べてみたい.
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