増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第4集
内分泌機能検査
150.抗利尿ホルモン(ADH)
斉藤 寿一
1
1自治医科大学・内分泌代謝科
pp.1996-1997
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222839
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ADHは下垂体後葉より分泌されるペプチドホルモンで,体液浸透圧の上昇や循環血液量の減少によりその分泌が促進される.腎集合管に作用して強い抗利尿効果を示し,臨床的にはその欠乏や作用の低下は多尿を,また過剰は低ナトリウム血症を招く.三菱油化キットなど最近開発された高感度ADH測定系の確立により,血漿ADH測定の意義は,診断や病態把握に重要度を加えつつある1).
血漿ADHの値は生理的にも,多量の飲水後には測定感度以下に低下し,また長時間の飲水制限や立位の後では10pg/mlを越えて上昇し,幅の広い変動を示す.一方,臨床的にADHの低下を示す尿崩症や相対的な高値を示すSIADHでも,血漿ADHの絶対値は多くがこの生理的変動域の範囲内にとどまっている.その点で,測定されたADH濃度が疾病を反映する異常であるか否かがまず評価されなくてはならない.それには,血漿浸透圧に照らして相対的に決まるADHの正常域から測定値がどのように変移しているかを判定しなければならない(図1).次に異常な低値または高値であると判定されたときに,これが視床下部下垂体後葉系自体の異常に由来するのか,それともその分泌調節系に影響する血圧や有効循環血液量の異常であるのかが決定されなければならない.
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