生体のメカニズム ホルモン・5
副甲状腺—カルシウム代謝の調節
井上 大輔
1
,
松本 俊夫
1
1東京大学医学部第4内科
pp.437-440
発行日 1992年5月1日
Published Date 1992/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901039
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はじめに
生体にとってカルシウム(Ca)は極めて重要なミネラルである.Caはハイドロキシアパタイト〔Ca10(PO4)6(OH)2〕の形で骨という堅固な構造物の主成分をなす一方,体内のあらゆる細胞においてその機能の維持・調節に重要な役割を果たしている.正常な細胞機能の発現には細胞外液のCa濃度の恒常性が必須であり,このため人体には血中Ca濃度をかなり厳格に一定に保つ機構が備わっている.その中で中心的な役割を果たしているのが副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)である.しかしながら正常なCa代謝の維持にはPTHのみでは不十分であり,1,25水酸化ビタミンD〔1,25(OH)2D〕との協同作用が不可欠である.人体内では主にこれら2つのホルモンが骨・腎・腸管の3つの標的臓器に作用することにより,Ca代謝の恒常性が維持されているのである.この場合のCa代謝の恒常性には2つの意味がある.1つは血中Ca濃度を一定に保つことであり,もう1つは体内外のCa収支,すなわち骨のCaバランスを一定に保つことである.前者は主にPTHがつかさどっており,後者には1,25(OH)2Dが大きくかかわっている.本稿ではこれら2つのホルモンによるCa代謝調節系とその評価法について概説する.
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