検査データを考える
リンパ球減少
厨 信一郎
1
1岩手医科大学第三内科
pp.441-444
発行日 1992年5月1日
Published Date 1992/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901040
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はじめに
末梢血血球減少症のうち,赤血球,血小板あるいは好中球の減少に比較してリンパ球の減少は注目されることが少ない.その理由としては,第一に赤血球(またはヘモグロビンないしヘマトクリット値)の減少は貧血と,血小板減少は出血傾向と,さらに好中球減少は易感染性という臨床症状と,それぞれ直接深く関連しているのに対して,リンパ球の減少は免疫能の低下と関連するものの,それ自体は臨床症状を発現しにくいこと,第二にリンパ球の減少は多くの場合,その基礎疾患を診断するための特異的な異常所見ではないこと,さらに第三になんらの疾患も有しない健常者にもリンパ球減少が少なからず見いだされることなどが挙げられる.表5および後述する本文中にリンパ球減少をきたしうる疾患あるいは病態を列挙してあるが,その大半はリンパ球減少症以外の臨床症状ないし検査成績によって診断が確定するものであることは容易に理解されよう.すなわちリンパ球の減少という検査所見は多くの場合,疾患の診断そのものに有用というより各症例の病態の一部を表現しているもので,診断と直接結びつくことはむしろ少ないと考えておくほうがよい.通常の末梢血液検査におけるリンパ球総数の減少よりも,むしろリンパ球サブセットの変動のほうが疾患特異性を示すことが多い.しかしながら以下に示すようにリンパ球減少が唯一診断の糸口になるケースも時には経験される.
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