増刊号 現場で“パッ”と使える 免疫染色クイックガイド
1章 こんなときどうする? 免疫染色の“困った”を解決
困った① 検体組織だけが染色されない
検体処理に問題がある
山田 寛
1
,
今川 誠
2
1慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット
2KKR札幌医療センター病理診断科
pp.920-926
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207310
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アセトンやアルコール固定による抗原の流出
■固定とは?
組織や細胞は血流から切り離された途端に自己融解(autolysis)や腐敗が始まる.固定とは,その自己融解を抑えて生きていたときに近い状態の組織や細胞構造を保持するために行われる化学処理である.また生の組織は微細構造がわかりづらく,固定によって発生する人工的変化(アーチファクト)を起こすことによって,その組織の特徴を強調させ,組織特有の物質に染色性を与える.一般に病理組織標本の固定にはホルムアルデヒドなどのアルデヒド系が使われるが,エタノールやアセトンなどの有機溶剤系固定液なども使用される.
この固定操作をいかに素早く行うかが,のちの組織標本や免疫染色,さらには遺伝子検索の質を左右する.よって固定を行うにあたっては,①固定液の種類,②固定時間,③固定温度などの条件によって多大な影響を与えるため,よく理解して用いる必要がある.
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