臨床医からの質問に答える
貯血式自己血輸血を行う場合の注意点について教えてください
鷹野 寿代
1
1聖マリア病院輸血科
pp.1142-1145
発行日 2015年10月1日
Published Date 2015/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206234
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貯血式自己血輸血とは?
■貯血式自己血輸血の歴史注1)
貯血式自己血輸血とは,あらかじめ患者自身の血液を採取して保管しておき,手術中の出血に対応する方法であり,わが国では1980年代から普及しはじめた.当時,輸血後肝炎(主に現在のC型肝炎)の発症率は同種血輸血患者の10%弱1,2)であり,貯血式自己血輸血は,まさにこの輸血後肝炎の予防目的であった3,4).手術中の出血が輸血を要するほど多いが,患者自ら貯血ができ,完治すればおおむね生命予後の良好な疾患(先天性心臓病,弁膜症,側彎症,変形性関節症など)では,貯血式自己血輸血は輸血後肝炎を回避できる夢の治療であった.しかしその後,輸血感染症検査の進歩で,輸血後肝炎の発症率は急激に減少し5,6),2014年,個別核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)導入後はほぼゼロになる(ゼロにはなりません)と予測されている.貯血式自己血輸血はその目的を失ったかにみえたが,これまでの過程で感染症予防以外にも多くの効用が見いだされ,現在も広く実施されている.
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