増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
術前貯血式自己血輸血
髙橋 孝喜
1
1虎の門病院輸血部
pp.320-328
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903171
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はじめに
同種血輸血により,不足した血液成分の補充という本来の目的はほぼ達成されるが,種々の輸血副作用の危険性もよく知られている.すなわち,B型およびC型肝炎,後天性免疫不全症候群(AIDS:HIV),成人型ヒトT細胞性白血病(ATLA:HTLV-Ⅰ)などのウイルス感染症の伝播,輸血後移植片対宿主病(GVHD),型違い輸血,癌に対する免疫抑制,あるいは同種免疫などの合併症の可能性が指摘されている(表1).その防止策として,血液センターおよび輸血部において,供血者のウイルス抗原抗体のスクリーニング検査,交差適合試験,輸血用血液に対する放射線照射などが実施され,従来に比べて,輸血副作用の発生は激減していると考えられる.しかし,完壁に安全な同種血輸血はあり得ないので,極力不要な輸血を行わないことが大切である.「出血しただけの血液を全血で補う」式に血液を湯水のごとく使う従来の考えかたから脱却して,輸血の必要性と合併症の危険性を勘案し,当該患者に補わざるを得ない血液成分のみを与える成分輸血の推進が重要である1〜3).特に,外科系の輸血については,より安全な輸血である自己血輸血の普及,適応拡大が求められている4〜7).
本稿では,術前貯血式自己血輸血を実施する際の留意点,各医療機関内での自己血輸血の推進に必要なシステムについてまとめてみたい.
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