輸血のきほん(6)
貯血式自己血輸血
奧山 美樹
1
1東京都立駒込病院輸血・細胞治療科
pp.895-900
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100820
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本連載の第3回「赤血球製剤」の稿(第41巻第2号)でも触れたように,近年,日本赤十字社(日赤)がNAT(nucleic acid amplification test;核酸増幅検査)を導入したことで,感染性病原体に対する同種血輸血の安全性は以前に比べ飛躍的に向上した.さらに病原体の不活化導入へ向けて検討が開始されるなど,感染性副作用に対する対策は今後も順次講じられていくであろう.しかし技術の進歩に対する過信は禁物であり,病原体の検出感度をいくら上げても輸血による感染の危険性は決してゼロにはならないことを忘れてはならない.また感染性副作用以外にも,起こるときわめて重篤で致死率の高い輸血関連移植片対宿主病(transfusion associated graft versus host disease:TA-GVHD)や,血小板輸注不応状態の原因となる抗HLA抗体の産生などの免疫学的な副作用は,他人の細胞を使用している限り起こりうる反応である.
このような同種血輸血による危険性を避けるために,自己血輸血が実施されるようになってきた.最近では,天皇陛下の手術の際に自己血を準備したという報道により,一般にも「自己血輸血」が広く知れわたってきているようである.また,今後社会の少子高齢化に伴い,輸血用血液の需要に対する献血者数の減少が危惧されている.限りある貴重な血液を有効に利用するためにも自己血輸血の推進は有意義であると考えられる.
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