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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
10章 血小板系
1 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
Idiopathic thrombocytopenic purpura(ITP)
矢冨 裕
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1070-1071
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206217
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特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)は,抗血小板抗体が血小板に結合した結果,脾臓を中心とする網内系細胞により捕捉,破壊され,血小板が減少する自己免疫性疾患である.近年では,末梢での血小板破壊亢進に加え,抗血小板自己抗体が骨髄巨核球にも結合し,血小板の産生障害を引き起こすこともITPの病態形成に重要とされている.ITPにおける自己抗体としては,血小板膜糖蛋白質(glycoprotein:GP)に対するものが主であり,とくにGPⅡb/Ⅲaが最も重要な認識抗原である.
急性型と慢性型が区別され,前者は小児に多く,しばしば感染症が先行するが,大部分の例は自然に治癒し予後良好である.一方,後者は各年齢層にみられる.増悪・寛解を繰り返し,自然治癒はあまり期待できない.一般にITPという場合は慢性型をさし,難病法における指定難病のひとつである.
臨床症状の主体は血小板減少による出血症状である.紫斑,特に点状出血が典型的であるが(→図1),粘膜出血,下血,血尿,頭蓋内出血なども発生しうる.また,血小板数5万/μL以下で出血傾向が出現しうる.血小板数が2万/μL以下になると,重篤な出血症状が出現する可能性が高まり,通常,入院のうえ,副腎皮質ステロイドを中心とした免疫抑制療法を行う.一方,出血症状が目立たない場合は,無治療で経過観察することも多い.
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