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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
8 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
Autoimmune hemolytic anemia(AIHA)
水間 知世
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1056-1057
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206212
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自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)は,赤血球膜抗原に対する自己抗体が産生され,抗原抗体反応の結果,赤血球が傷害を受けて溶血し,貧血を来す病態である.原因不明で起こる特発性のものと,基礎疾患による免疫異常の結果起こる続発性のものがある.基礎疾患としては全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患,悪性リンパ腫や慢性リンパ性白血病などのリンパ系腫瘍,感染症などが挙げられる6).
産生される自己抗体は,4℃を抗原抗体反応の至適温度とする冷式抗体と体温37℃を至適温度とする温式抗体に大別される.一般に温式抗体によるものをAIHAと呼ぶことが多いが,広義のAIHAには冷式も含まれる.冷式抗体による病型には,寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)がある.温式抗体はほとんどがIgGに属し,まれにIgM,IgAも存在する.また,温式・冷式の両者が検出される混合型も存在する.
AIHAは臨床経過から急性と慢性に分類され,急性は6カ月以内に治癒するが,慢性は年単位または無期限の経過を取る.小児の急激発症例では急性が多いが,成人では慢性が多い.臨床症状としては,溶血により貧血,黄疸を認め,肝脾腫もしばしばみられる.治療の第一選択は副腎皮質ステロイドである.
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