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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
7 鎌状赤血球貧血(SCA)
sickle cell anemia(SCA)
大金 亜弥
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1054-1055
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206211
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鎌状赤血球貧血は,鎌状(三日月形)の赤血球と,赤血球の過剰破壊による溶血性貧血を特徴とする常染色体劣性遺伝の疾患である.異常Hb(hemoglobin)であるHbSによって溶血性貧血を来す.ホモ接合体では,慢性溶血性貧血,末梢血流閉塞による疼痛発作と,その後遺症としての多臓器機能障害があり,予後不良である.ヘテロ接合体では,低酸素状態でのみ鎌状赤血球が出現するため,日常生活は可能である.鎌状赤血球はマラリアに対する防御のための変化であり,本疾患はマラリアの好発地域であるアフリカなどに多い.
HbSは,β6(A3)のGlu(glucose)がVal(valine)に置き換わることにより,Hbの分子間結合が強化され,この結合力により線維束状の結晶様構造を形成する.この硬い線維束が赤血球膜を突き上げるように伸びることで,HbS症特有の鎌状変形を起こす.HbSホモ接合体の赤血球は,酸素分圧約45mmHg以下でHbSの析出により鎌状に変形し,赤血球膜の柔軟性を失う.静脈血酸素分圧は平均40mmHgであるため,患者の赤血球は常に鎌状に変形する危険がある.静脈血は血流速度が遅く,より血栓が形成されやすい環境にある.
診断には,赤血球鎌状化試験(sickling test)が有用である.
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