Japanese
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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
4 サラセミア
Thalassemia
野々部 亮子
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1048-1049
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206208
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サラセミアは先天的なヘモグロビンの遺伝子異常症であり,特定のグロビン鎖の合成障害に起因する.本症は,常染色体優性遺伝形式をとり,地中海沿岸,アフリカ,中東,インド,東南アジアなどにベルト状に多発している.これらの地域はマラリアの多発地域と重なっていることから,サラセミアの血球がマラリア抵抗性を示すものと考えられている.
サラセミアでは,α,βグロビンのうちどちらか一方の産生が遺伝的に減少しているため,ヘモグロビン(Hb)四量体の生成が低下し,血球内のHb量が減少する.相対的に余剰となったグロビンは血球内の蛋白分解酵素によって処理され,変性してハインツ小体を形成する.これが赤血球膜に酸化的障害を与えて溶血性貧血を来す.この溶血性貧血は一般に重症サラセミア,あるいは中間型サラセミアでみられ,日本で最も多い軽症型では通常みられない.軽症αグロビンの産生低下をαサラセミア,βグロビンの産生低下をβサラセミアと称している.
軽症例では治療不要だが,感染症などを契機に貧血が悪化することがある.重症型では骨髄の異常造血を抑制するため,定期的な赤血球輸血を行う.輸血によるヘモクロマトーシスを防ぐため,鉄キレート剤の投与も行う.その他の治療として,摘脾や免疫抑制剤投与なども行われる.
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