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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
3 鉄欠乏性貧血(IDA)
Iron deficiency anemia(IDA)
野々部 亮子
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1046-1047
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206207
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鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia:IDA)は日常診療で最も頻繁に遭遇する血液疾患であり,ヘモグロビン(Hb)の材料となる鉄の需要量または喪失量が供給量を超えた時に生じる疾患である.日本人女性では,8〜10%の罹患率があるといわれている.
IDAの発症には性別,年齢,環境など種々の要素が関与しており,①鉄の供給不足,②喪失亢進,③需要の亢進などが主な原因として挙げられる.女性では月経過多,子宮筋腫などの婦人科的疾患によるIDAが多い.一方で,男性や閉経後の女性では体外に喪失する鉄は少ないため,上・下部消化管出血や悪性腫瘍の有無について精査を行う必要がある.
IDAは比較的長期間にわたり徐々に進行していることが多く,全く症状がみられずたまたま健診でみつかるものから,動悸や息切れ,易疲労感を呈するものまで,その程度は様々である.
治療については,ほとんどの場合鉄剤投与で改善がみられるため,基本的に赤血球輸血の必要はない.治療の第一選択は鉄の補充であり,経口投与が原則である.貯蔵鉄の指標であるフェリチンが正常化するまで投与を行う.
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