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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
5 遺伝性球状赤血球症(HS)
Hereditary elliptocytosis(HS)
野々部 亮子
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1050-1051
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206209
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遺伝性球状赤血球症(hereditary elliptocytosis:HS)は黄疸,貧血,脾腫を主徴とし,末梢血における小型球状赤血球の存在や浸透圧抵抗の減弱を特徴とする先天性溶血性貧血である5).本症は,わが国の先天性溶血性貧血において,その約70%を占める最も頻度の高い疾患である.
原因となる遺伝子としてはSPTA1(spectrinα鎖),SPTB1(spectrinβ鎖),ANK1(ankyrin 1),SLC4A1(protein AE,またはband 3),ELB42(protein 4.2)などが報告されており,細胞骨格の異常により,円板状の赤血球形態を保てなくなる5).通常,遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが,常染色体劣性遺伝を示す例や遺伝性を証明できない弧発例と考えられる症例も全体の約1/3程度存在する.
HSの症状に関しては,骨髄の赤芽球系過形成のため,貧血は代償されていることが多い.重症例では中等度の黄疸と貧血症状が認められる.また,高頻度に脾腫がみられ,胆石の合併も多く認める.さらに,他の溶血性貧血を呈する疾患と同様,急激な貧血の増悪をみることがある.溶血発作と無形成発作の2種類が知られており,本症の診断の契機となる場合も多い.
本症のもっとも有効な治療法は摘脾である.軽症のHSでは必ずしも積極的に摘脾を行う必要はないが,注意深い経過観察が必要である.
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