最近の検査技術
原子吸光分析法
村中 日出夫
1
1日本専売公社京都病院内科
pp.33-40
発行日 1974年5月1日
Published Date 1974/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200449
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七色に輝く美しい太陽スペクトル,その中に見いだされる黒い線,すなわちフラウンホーファー線は物理学を学んだ人々にとって印象深いもののひとつであろう.この線は19世紀初め,J. Fraunhoferが見いだしたもので初めはこれが何を意味するものかわからなかった.19世紀半ばにイギリスのD. Brewsterは,光源より低い温度の気体が光源からの光を吸収するために生じたものと考えた.その後G. Kirchhoffは太陽を取り巻く低温の外郭部に存在する気体中の元素が"ある原子状態"にあって,太陽スペクトルの特定の一部の光を吸収するために生ずるもので暗線の現れる位置(波長)は元素に固有で,その発光スペクトルと一致するということを示した.ここでいう"ある状態"とは原子の基底状態(ground state)といわれるもので,原子が最も安定した電子配列を有する構造にある時である.
この状態の原子は光エネルギーを吸収し図1のように電子の軌道を変え励起状態(excited state)となる.このことを原子吸光(atomic absorption)という.この時,原子は吸収した光と同一波長の2次発光をするが,これが原子螢光である.原子の励起状態は光エネルギーのほか熱エネルギーなどでも起こされるが,この時エネルギーを放出し発光して基底状態になる.このことを応用したものが発光(炎光)分析である.
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