総説
原子吸光法—臨床化学技術者のために
坂岸 良克
1
1東医歯大・中検生化学
pp.233-238
発行日 1971年3月15日
Published Date 1971/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907127
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まえがき
臨床化学分析の対象となる生体成分の多くは有機化合物で,無機物の項目が占める割合はむしろ少ないといわなければならない.このことは生体が昔から小宇宙と称されていたように,ほとんどの元素を含むにもかかわらず,実際に生体反応に関与する無機物をあげてみると,ごく限られたものしか知られていないためであろう.金属元素は不純物,爽雑物として生体成分に混在するだけでなく,酵素反応に直接大きな役割りを果たしていることが知られていた.しかし,公害が問題になってきた昨今では,われわれが今まで見すごしてきた金属も,生体内でかなり強い働き(阻害効果のみではないかもしれない)を示すことに驚かされている.
金属元素は単独でもまた高分子物質の構成成分としても存在するが,ほとんど原子またはイオンとして生体反応に関係する.したがって分子の数を論じる通常の分析法とはかなり異なった扱いが適用される.ナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属を除くと,アルカリ土類を含めて,金属原子は配位化合物を作りやすい.周知のように原爆症の治療に伴って導入されたEDTAほか各種キレート剤は金属原子とキレート化合物を作ることから,それらの定量法に応用されるようになった。金属イオンについて,この方法は滴定および比色法として普及している。
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