- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Opportunistic infectionは日和見感染と訳され,その訳語は定着しつつあるようであるが,要するに"雑菌あるいはさほど病原性の強くない微生物によって引き起こされる感染"のことである.したがってそこでは菌自体の病原性よりも宿主側の条件が感染・発症に重要な意義を持つことになる.戦後抗生物質が登場して感染症における真菌の役割が見直され,菌交代現象(colonization),菌交代症(super- or suprainfection)という概念が現れた.これらは抗生剤の使用によって優位を占めるようになった菌の出現,あるいはその優位菌による感染を意味するものであるが,opportunisticinfectionではこのような2種以上の菌の競合を考慮することなく宿主の抵抗減弱に起因する感染症を意味するものである.そこには,抗生物質に加えて,ホルモンや免疫抑制剤などの新しい治療薬が登場してかえって宿主の抵抗減弱を招き弱病原性菌の感染を助長したという今日的背景がある.また治療法の進歩によって延命する抵抗減弱者の増加も弱病原性菌の感染の予備軍を作る結果となった一面も強調されている.
真菌は本来病原性のさほど強くない微生物であって自然界に広く分布しており,その種を維持していくためにはほとんど人体への寄生・感染を必要としないのが通例であるので本質的な偏性寄生性を持つ病原真菌は多くない.したがってそのような菌による感染が成立するためには宿主の抵抗減弱という条件が必要となるので,真菌を主役としたopportunistic fungus infectionがその最初のテーマとして取り上げられることになったのである1〜3).
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.