特集 手術と抗生物質
Opportunistic Infection
酒井 克治
1
,
藤本 幹夫
1
Katsuji SAKAI
1
,
Mikio FUJIMOTO
1
1大阪市立大学医学部第2外科
pp.1431-1437
発行日 1979年9月20日
Published Date 1979/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207282
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はじめに
1960年代の中頃から外科領域における感染症起因菌の主体はグラム陽性球菌からグラム陰性桿菌へと変遷しはじめ,現在では起因菌の3/4がグラム陰性桿菌で占められるようになつた.このような大きな変革をもたらした原因の一つには抗生剤の普及および多用があげられる.すなわち,セフアロスポリン剤や広域合成ペニシリン剤が感染予防に頻用されるようになつた結果,感受性の高いグラム陽性球菌が減少し,反面強い抵抗性を有するグラム陰性桿菌が残存し,これが感染症の起因菌になつて来た.他方,診断,麻酔,手術,術後管理などの急速な進歩に伴つて,幼小児や高齢者,重篤な基礎疾患をもつものに対しても積極的に手術が行なわれ,しかも術前術後に放射線照射や制癌剤投与などが行なわれる機会がふえて来た.このような宿主においては感染抵抗性が減弱し,本来侵襲性の弱い,いわゆる弱毒菌による感染が生じやすい13).これらはopportunistic infectionと呼ばれ,今日,その増加が注目されている.
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