検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
ST上昇及び下降
野原 義次
1
1東京医科大学内科学第2講座
pp.289-296
発行日 1980年4月1日
Published Date 1980/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202032
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STの上昇あるいは下降は日常臨床の心電図でよく見掛ける所見であり,ST上昇は心筋梗塞を,下降は冠不全を,連想するほど身近な所見である.が同時に,ST変化の理論は分かりにくいものの一つである.今日,心電図の理論的解釈には,臨床的には一般にBernsteinの膜説よりLewis1)をへて,Wilson2)へと発展した二重層説が受け入れられているが,生理学的にはNa,K,Caなどのイオン流説が主流をなしている.この理論によりQRSの成立機序についてはかなり素直に理解されるが,ST,T変化の成立機序については,なお理論的にすっきりしない点が残されているようである.
本稿においては,ST上昇及びST下降について,まず臨床的及び実験的事実を述べ,次いでその基礎理論-なぜこうなるの?を解説的に述べようと思う.
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