おかしな検査データ
検体が新鮮すぎた(?)
岩田 進
1
1日大板橋病院中検
pp.236-237
発行日 1977年3月1日
Published Date 1977/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201318
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免疫学的反応を利用した妊娠反応は,小規模な検査室でも広く行われるようになり,動物を用いた生物学的方法にとって代わってきている.この免疫学的方法は,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)を感作血球凝集阻止反応,ラテックス凝集反応またはラテックス凝集阻止反応を利用して検出する方法がほとんどである.私どもの検査室では感作血球凝集阻止反応を利用した試薬で妊娠反応の定性,定量を行っているが,特に最近は定量の依頼が増してきている.
ある日の午後,外来から妊娠反応定量の緊急が依頼された.早速いつものとおり検査を行った.結果は陰性であったのでその旨電話で報告したら,医師は"本当ですか?"と大声で問い返してきた.患者は妊娠5か月の初めで腹囲が正常より少し大きいのと,わずかに出血を見たので胞状奇胎を疑って定量を依頼したというのであった.正常妊娠にしても胞状奇胎にしても,妊娠5か月でHCGが陰性になることはない.もしあるとすれば,胎児死亡か流産が進行し胎盤より離れた場合だけである.これはおかしいと再検を行った.結果は原尿の所でわずかに血球の寄りを認めたが疑陽性くらいで,陽性とは判定できなかった.
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