病気のはなし
肺癌
田村 昌士
1
1順大呼吸器内科
pp.6-11
発行日 1977年1月1日
Published Date 1977/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201245
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日本の肺癌は着実に増え続けており,1972年にはついにその死亡数が肺結核のそれを超過した.このままの増加率で進めば,肺癌の死亡数は少なくとも10年以内に胃癌を追い越して,癌死亡のトップになるだろうと言われている.肺癌に関する研究は本邦においても年々盛んに行われているが,肺癌を治癒することは困難であり,現在の肺癌手術後5年生存率はせいぜい30%前後に過ぎない.しかも多くは医療施設を訪れた時には,既に手術不能の状態に陥っているのが現状である.最近,high risk groupについて定期検診を行い,早期診断,早期治療により好結果が得られているが,検診施設,スタッフ,検診の経費など多くの問題をかかえており試験的段階の域を出ていない.
肺癌は元来,気管支から発生することが多いため,欧米では気管支癌(bronchial carcinoma)と呼ばれることもある.すなわち気管から肺胞までの気管支肺胞系及び気管支の導管,腺房などの上皮を発生母地として肺癌が発生する.肺癌はその病理組織学的特徴から幾つかの組織型に分類されており,それら組織型の違いによって発生部位,進展様式,悪性度などの臨床像も多少異なっている.
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