Laboratory Practice 〈移植医療〉
―移植医療と検査⑭―サイトメガロウイルスの検査
豊川 真弘
1
,
西 功
1
,
浅利 誠志
2
1大阪大学医学部附属病院臨床検査部
2大阪大学医学部附属病院感染制御部
pp.1473-1478
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103797
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はじめに
サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus,CMV)はヒトヘルペスウイルス科のベータヘルペス亜科に属する二本鎖DNAウイルスであり,分類学的にはHHV5(human herpesvirus 5)に相当する.わが国では,垂直感染または水平感染により,成人の60%以上が初感染を受けているが,多くの場合不顕性に経過し,ウイルスは終生にわたりその宿主の体内に潜伏感染している1).
CMVは細胞性免疫能が正常な宿主に対しては通常,病原性を呈しないが,移植患者などの免疫不全者に対しては,発熱,白血球減少,網膜炎,間質性肺炎,腸炎,肝炎,脳炎などさまざまな病状を呈する.特に間質性肺炎は重要であり,無治療の場合の致死率が極めて高い.また,CMVは拒絶反応増強や心臓移植後の冠動脈硬化症発症など,移植臓器生着の成否にも大きな影響を及ぼすことから,CMV感染症対策は移植医療を行ううえで極めて重要である.CMV感染症は移植後の感染症として最も高頻度(20~60%)に認められ,時期としては移植後1~3か月の中期(図1)に好発する2).
本稿では,移植医療において活用されているCMV感染症検査について概説する.
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