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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
1. ウイルス抗体価測定
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)は日本人において,成人になるまでに約90%前後の人が感染しており,ほとんどの人は不顕性感染の型をとり,潜伏感染の状態で生活している.したがって,すでにほとんどの人がウイルス抗体陽性となっている.CMV感染症を診断する場合,その他のウイルスと同様,ペア血清のウイルス抗体価を測定する必要がある.ペア血清で有意な上昇が認められた場合のみ,潜伏感染から再活性化の状態にあることを証明することができる.ここで注意しなければならないことは,抗体価の上昇はCMVの再活性化の証明であって,感染症の診断にはならない,ということである.しかし,単一血清でIgM抗体が検出された場合は,CMVの初感染を検出している可能性が高く,感染症の診断として有用な場合がある.しかし,早期診断が重要になるCMV感染症において,抗体価が上昇するまで時間がかかることや,ペア血清が必要なことなどから,抗体価測定は臨床的(治療を考える場合)に有用とはいえない.
2. 抗原血症
CMV感染初期から後期に産生されるCMV核内蛋白であるp65を,モノクローナル抗体を使って免疫染色し検出(間接免疫酵素抗体法)する方法である1,2).白血球(ほとんどが好中球)に貪食された,または感染したCMVの蛋白を極めて早期に検出することができる.検体としは末梢血を用いる.通常50,000個の細胞(好中球)をカウント(鏡検)し,陽性細胞の数で結果を示す定量的方法である.この方法はCMV感染症の早期から陽性所見を得ることができる検査法であり,早期診断,早期治療が必要なCMV感染症の診断法として有用である.しかし,この方法もCMVの活性化(再活性化)を示すだけで,臓器特異性はない.CMV抗原血症が陽性というだけで,肺炎の起因病原体としてCMVを直接証明したことにはならないことも十分考慮するべきである.
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