特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
12) 感染症 (4)サイトメガロウイルス(CMV)
豊川 真弘
1
,
西 功
1
,
浅利 誠志
2
Masahiro TOYOKAWA
1
,
Isao NISHI
1
,
Seishi ASARI
2
1大阪大学医学部附属病院臨床検査部
2大阪大学医学部附属病院感染制御部
キーワード:
CMV血症
,
抗原血症検査
,
DNA-PCR法(定量法)
Keyword:
CMV血症
,
抗原血症検査
,
DNA-PCR法(定量法)
pp.1482-1487
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101442
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はじめに
サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus;CMV)は,ヒトヘルペスウイルス科のベータヘルペス亜科に属する二本鎖DNAウイルスである.わが国では,垂直感染または水平感染により,成人の70%以上が初感染を受けているが,多くの場合,不顕性に経過し,ウイルスは終生にわたりその宿主の体内に潜伏感染1)している.
CMVが臨床的に問題となるのは,主に胎内感染による先天性巨細胞封入体症,輸血や臓器移植などによる医原的感染症および免疫抑制状態下の患者における日和見感染症である.特に移植後の易感染患者においては,体内に潜伏するCMVが再活性化して内因性感染(回帰発症)が起こり,間質性肺炎,肝炎,腸炎など様々な病状を呈し,しばしば致死的経過をたどる.
近年,ガンシクロビル,ホスカルネットなどの有効な抗ウイルス薬の開発に伴い,CMV感染症の標的治療が可能となった.これらの薬剤を早期適正治療に役立てるためにはCMV感染症を正確かつ迅速に診断する必要があり,核酸増幅検査はこの目的にかなう検査法として有望視されている.
本項では,現在,検討・評価が進められている定量PCR(polymerase chain reaction)法を中心に,CMV核酸増幅検査の現状について概説する.
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