増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
1)感染症
(5)サイトメガロウイルス
豊川 真弘
1
,
西 功
1
,
浅利 誠志
2
1大阪大学医学部附属病院臨床検査部
2大阪大学医学部附属病院・感染症対策部
pp.1016-1020
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906345
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はじめに
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)は免疫能が正常な宿主に対してはほとんど病原性を有しないが,骨髄移植患者やAIDS(acquired immunodeficiency syndrome,後天性免疫不全症候群)患者などの易感染性宿主においては,間質性肺炎,網膜炎,腸炎,肝炎などさまざまな感染症を引き起こす.CMV感染症は骨髄移植や臓器移植患者の20〜50%1,2)に認められ,なかでも移植後10〜20%に合併するCMV間質性肺炎は,適切な治療を行わなければ80%以上が死に至るとされており,CMV感染対策は移植医療を行ううえで非常に重要である.
遺伝子学的技術,特に核酸増幅技術の進歩によって,CMVに対してもDNAを標的とした迅速検出が可能となった.しかし,易感染性患者にみられるCMV感染症の多くは内因性感染症であるため,単に生体材料からDNAが検出されたからといってCMV感染症と即断することはできない.近年,この問題を解決する手段として,CMVの増殖時にのみ発現される転写mRNAを測定し,CMV再活性化(活動性)の指標とする試みがなされている.
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