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鉄代謝の最新知見
土谷 健
1
1東京女子医科大学第四内科
pp.1303-1306
発行日 2012年10月1日
Published Date 2012/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103744
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はじめに
鉄は赤血球のヘモグロビンを構成するのみならず,リボヌクレオチドリダクターゼなどの酵素の構成因子として,細胞増殖・周期にかかわる不可欠な金属元素である.生体内で,2価鉄は毒性が強いが3価鉄は不溶性であり,その毒性をカバーしながら輸送を行う特異性がある.過剰な鉄はフェントン反応により活性酸素を生じ,酸化ストレスとなり組織障害や発癌などに関与し(図1)1),また細菌などの増殖を促進することになる.このため,至適な鉄量を維持することは生体の恒常性維持に不可欠である.
鉄代謝の基本は,後述するヘプシジンにより体内への取り込みを制御し,寿命を終えた赤血球由来の鉄を再利用することにより成り立っており,積極的に鉄を排泄する系をもたないことである.このため鉄輸送蛋白の遺伝子変異による遺伝性ヘモクロマトーシスや,再生不良性貧血,過去において合成エリスロポエチンの臨床応用以前の腎性貧血などでは多量の輸血を必要とし容易に鉄の過剰状態が生じたのである.
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