検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
鉄代謝と検査
服部 理男
1
1埼玉県立がんセンター
pp.971-977
発行日 1980年12月1日
Published Date 1980/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202175
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鉄は地球を始め,太陽系惑星の主要な構成成分であるが,極めて多くの物質と反応して化合物を作る性質を持っている.このような基本的な性質から,地球上のあらゆる動植物は鉄を体の構成成分としている.ことに哺乳類を始めとする高等動物では,ヘモグロビンの主要成分となっているのを始め呼吸酵素を含む細胞性ヘミンの成分として,生命の維持に不可欠の元素となっている.
鉄は地球の表面に常に多量に存在しているにもかかわらず,動植物を問わず体の鉄分が欠乏する状態が非常にしばしば観察される.ことに人間では非常に広範囲に鉄欠乏性貧血が存在している.しかし逆に少なからざる数の人々が鉄の過剰状態に悩んでいるのも事実である.このように鉄についての人の生理と病態には複雑なものがあり,鉄代謝に関係する検査はその目的と数がはなはだ多数にのぼっている.また病気の性質上,鉄の代謝の異常が原因でないものでも,病気の診断・治療に鉄あるいは鉄化合物を検査することが病態の解明に大きな役割を果たすことが少なくない.本稿では鉄の代謝自体とそれに直接関係する検査に焦点を当てて論ずることにするが,部分的には鉄代謝検査の応用としての分野にもふれることにしたい.
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